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注文住宅を建てるとき、住宅ローンを利用する人が多いのではないでしょうか。長く払い続ける住宅ローンですから、金利など特徴を理解して選びたいものです。住宅ローンにはどのような種類があるのか解説します。
FP 柴沼直美 様
https://www.caripri.com/
外資系証券会社、投資顧問会社にてアナリスト、日本株ファンドマネジャーを経験。現在はライターとして執筆活動も行いながら、住宅ローン・資産運用や教育費といったアドバイザリーサービスも提供している。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士・CFP(R)認定者。
山口県の注文住宅着工棟数は3,302棟、延べ床面積は110㎡強、土地と家を同時に購入した世帯の費用相場は3,788.7万円、土地取得の為の借入がない世帯の建築費の相場は3,189万円となっています。
参考までに土地付き注文住宅融資利用者の全国平均の年齢は37.5歳、世帯年収は611万円。土地取得費が1,335万円、建築費が2,777万円です。ローンは3,665万円、総返済負担率は23.7%となっています。
参照元:https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003114540
一般的に注文住宅を購入する場合に、どのくらいの費用がかかるのでしょうか。もちろんケースバイケースですが、必ず支払わなければならないものからピックアップしていきます。
まずは「諸費用」と言われているもので、税金や手数料を指します。これらの支払いは現金で行いますから、たとえローンを組んだ時に頭金ゼロとしたとしても用意しなければなりません。
具体的には、契約時の印紙税や、登録免許税や司法書士報酬などの登記費用があげられます。ローンを組んで購入する場合はこれに住宅ローン借入費用が加わります。
ではこれらの費用はいくらぐらいなのか、についてですが、注文住宅の場合は土地・建物の総額の10~12%前後を心づもりしておけばよいでしょう。例えば総額で4,000万円という予算の場合は400万円~480万円になりますから、土地・建物を3,500万円程度に収めるというイメージになります。
一般的に無理のない返済負担率は25%までといわれていますが、筆者の経験上、17~20%、つまり20%を超えないというのが家計にしわ寄せがこないプランだと思います。
返済負担率というのは、年収(手取りではなく額面)に対して住宅ローンの年間返済額の割合のことで、「年間返済額÷額面年収×100」で求められます。
例えば年収500万円というのは、税金や社会保険料を控除後の手取り(実際に使える可処分所得と言いますが)は380万円といわれています。これに対して、年間20%のローン負担(対年収)とすれば、100万円が返済にあてられますので、自由になるお金は280万円と、額面の56%にまで圧縮されますからかなり余裕がなくなる感じがしますね。
これに対して17%だとすればローン返済は年間85万円となり、自由になるお金は295万円です。たかだか15万円の差と思うかもしれませんが、少しまとまった出費があった時などにおいておけるだけの金額になります。また計画する返済額は少し控えめに見積もっておいて、余裕ができたら繰り上げ返済に充当すれば、気持ちにも余裕が生まれます。
繰り上げ返済をすれば、手数料はかかりますが、ローン返済期間を短縮したり、月々の当初設定額を少なくしたりすることができます。
注文住宅の場合、ローンを組むのが一般的だと思いますのでここでは、住宅ローンの仕組みを整理したいと思います。
まず金利が固定か変動で見てみましょう。
契約時の金利がローン返済期間中変動しません。金利と元本を合わせた返済総額があらかじめ決まっていますから、市場動向で金利が上がった場合でも影響を受けないというメリットがありますが、市場金利が下がった場合はより高い契約時の金利が適用されるデメリットにもなります。
市場金利の動きによって返済適用金利がかわります。通常年に2回金利が見直されます。固定金利型に比べて低めに設定されていますが、市場金利が上昇すれば返済適用金利も上昇するリスクがあります。金利が急上昇した結果、毎月の返済額を上回った場合、未払い利息が発生して、返済総額が当初の見通しより膨らむ場合も発生します。
固定金利型と変動金利型の折衷で、契約当初から一定期間を固定金利、期間終了のタイミングで金利のタイプを選択します。金利変動によって支払総額が変わるというデメリットはありますが、固定金利期間を短くすれば金利が低くなります。このタイプでは固定金利期間終了時に、希望のタイプを申告しない場合、自動的に変動金利になります。
次に、契約先によって、民間ローン・公的ローン・提携ローンがあります。それぞれについてご紹介します。
銀行や保険会社と契約するローンです。変動金利型と固定金利期間選択型が多いですが、金融機関にも提供してもらえるローン商品は様々です。金融機関ではなく、不動産会社経由でのローンもあります。手間いらず、金利を低く設定してもらえる可能性もありますが、ローンは長期契約ですから必ず納得のいくものを自分で確認することをお勧めします。
勤務先で1年以上財形貯蓄をおこなった人は財形ローンを利用することができます。5年ごとに金利の見直しがある「5年間固定金利制」。財形ローンの他にも、地方自治体がおこなう「自治体融資」もあります。
民間の金融機関と住宅金融支援機構が提携したローンをフラット35と言います。最長で35年の全期間固定金利で、保証料や繰上返済時の手数料が無料になったり、省エネ・耐震性の高い住宅について金利を一定期間引き下げる制度が適用できたりするオプションがあります。ただし窓口は民間の金融機関です。
自己資金・親からの援助などで1,000万円が充当できると仮定して、年収ごとに借入金額の目安を建ててみました。
年収・手取り金額は概ね233.5万円。1月当たり19.5万円という計算になります。これに対して月々のローン返済額は68,750円(27.5%)となります。もしこの状態で子どもができたばかり、子どもが小さくて妻が外に働きに出ることは難しいとなれば、行政の窓口で何か支援してもらえる制度や給付金がないかなど検討するといいでしょう。
最近は子育てに関して支援する制度が充実しているので活用できるものも見つかるかもしれません。子どもがいない場合は共働きで、ローンの繰り上げ返済などを積極的に行っていくのもいいでしょう。また住宅購入に伴って発生する、固定資産税や都市計画税などの費用もとっておかなければなりません。
年収400万円の手取金額は概ね312万円。1月当たり26万円となります。これに対して月々ローン返済額は10万円(年収の30%)です。もし子どもがまだ小さく、共働きが無理な状態であれば、余裕は小さいかもしれません。しかしこのような状態は長く続かないと考えて今の月々の家計が赤字にならないように計画を立てていきましょう。
住宅という大きな買い物をしたのですから、多少の引き締めも必要です。趣味に使っていたお金、車の買い替えや携帯・通信費など大きな出費項目を見直してみましょう。子どもがいない場合は、共働きで収入の柱を太くしておくと安心です。
年収500万円の手取り金額は概ね387万円。月額換算で32.25万円。これに対して住宅ローンの返済額は月々12.5万円。子育て中なのか、子どもがいないのかによって大きく余裕度は変わります。
子どもがいない場合は、将来のことを想定して余裕分をためておくことができます。子育て中であれば、なかなか共働きも難しいので、節約して支出を抑えることになります。
一般的に、家計運営で収入を増やすことよりも支出を抑える方が難しいと言われていますが、マイホームのために日ごろの出費を見直すという習慣を身につけておくチャンスだと割り切ってストレスをためないように取り組んでみましょう。
年収600万円の場合、毎月のローン返済に充当する金額は15万円(年収の30%と想定)となります。
小学生の子育て中だとすると、子どもの教育費が気になります。年収600万円の場合の手取り額は概ね458万円。月々38万円という計算になります。
例えば私立中学に進学させたいとなると、塾に通わせたり入学金や学費が余分に発生したりしますから、家計がひっ迫する可能性が出てきます。
大学であれば授業料免除・奨学金制度が充実していますが、中学高校の場合はどんな制度が活用できるのか、自治体や学校に確認して情報収集に努めるとよいでしょう。
年収700万円の場合、毎月のローン返済に充当する金額は204,167円(年収の35%)。
年収700万円の場合の手取り金額は概ね524万円、月額では43万円となります。そのうちローン返済に半分近く充当するのは、子どもの人数や教育費が嵩む時期によっては厳しくなります。
そうなると、ボーナスからも返済することになります。最近では、ボーナスは業績連動となる場合もあり、いくら自分が一生懸命仕事をしても、会社の業績が思ったように伸びなければボーナスは期待した額は望めないことも多く、金額が不安定なボーナスに依存するのはリスクが高いと言えるかもしれません。
年収800万円の場合、手取りは約590万円。1月あたり49万円となります。じつは、年収800万円が税や社会保険料の負担感が重くなるゾーンと言われています。毎月のローン返済に充当する金額は233,333円(年収の35%)となります。
このくらいの年収レベルになると普段の支出も多くなっているかもしれません。大きな注文住宅になれば維持費もかかります。
子どもの大学進学を考える場合は、奨学金や授業料免除などの制度を活用すること、冠婚葬祭や親の介護などで思わぬ出費が発生してしまうリスクに備えて共働きが可能であれば少しでも収入を増やすように取り組むと余裕が生まれます。
購入した土地の条件や工務店との取り決めなどによって代金支払いのタイミングはかわりますが、住宅ローンの融資が実行されるのは、建物が完成した時です。ですから、土地代金や建物完成までに工務店に支払う必要がある代金については、融資実行前に用意しておかなければなりません。
最初支払うのは、土地の契約時の「契約手付金」で、これは売買価格の5~10%相当が相場と言われています。土地が3,000万円だったとすれば、10%の300万円を支払います。
次に土地の残額、この場合ならば2,700万円を土地引き渡し時に支払います。土地の引き渡しを受けてから、建物工事がはじまります。一般的には工事の進捗状況によって完成までに分割して工事代金を支払います。例えば、着工と上棟時に30%ずつ、完成時に40%を支払うとすると、建物完成する前にかなりの部分を支払うことになります(例でいえば、土地全額と建物の60%分)。
このタイミングを確認して、ローンやつなぎ融資についてローン会社に相談することになります。